東京で護身術教室(道着のいらない護身術)を運営している筆者が、アクション映画・ドラマの中で、護身術参考になると感じたものを紹介します。
1.映画『ベイビーわるきゅーれ』シリーズ
監督: 阪元裕吾
主演: 髙石あかり(桜)、伊澤彩織(まひろ)
◆ ストーリー
殺し屋として育てられた少女・桜(15歳) と まひろ(17歳)。
抜群の戦闘能力を持ちながらも、一般社会で生活するため「自立訓練」として、ごく普通のマンションで共同生活を始めることに。
しかし、
- オタク気質でコミュ障気味なまひろ
- 感情が薄いが時に暴走気味の桜
という性格が衝突しまくり、日常生活はトラブル続き。
その一方で、裏社会の問題にも巻きこまれ、2人は殺し屋としての能力を発揮していく。
◆ 見どころ
- 伊澤彩織のキレのある本格アクション
- 桜とまひろの掛け合いコメディ
- 「日常×殺し屋」というギャップによる面白さ
◆ 参考になる格闘技・武道・カンフー・護身術
髙石あかりさんと伊澤彩織さんのダブル主演で、お二人の構え方やアクションシーンがしっかりしたものになっています。
特に伊澤さんは元々はアクションスタントの出身で、後述のジョンウィックにもスタントとして出演している実力派です。
ボクシングのようなスピードのある動きや頭突きなど、体を上手く使った技が参考になります。
また、ナイフや銃などの対武器に対する制圧術や、障害物を活用した翻弄の仕方も多く使用されています。
ポップな女性二人の性格が、殺し屋という世界観を上手くマイルドにさせています。コミカルな描写も多く、シリアスな映画が苦手な人でも見やすいです。
2.映画『ザ・ファブル』シリーズ
原作: 南勝久の人気漫画『ザ・ファブル』
主演: 岡田准一
監督: 江口カン
◆ ストーリー
伝説の殺し屋として恐れられる男、“ファブル”こと佐藤アキラ。
一度仕事を始めれば必ずターゲットを“6秒以内に仕留める”といわれる無敵の存在だが、ある日ボスから突然の命令が下される。
「1年間、普通の人として暮らせ。誰も殺すな」
こうして、殺し屋としての常識しか知らないファブルが、“一般人のフリ”をして大阪で暮らすことに。
しかし、普通の生活を送りたいと思いながらも、周りではヤクザの抗争やトラブルが次々と起こり、ファブルは“誰も殺さずに”人々を守るため奔走することになる。
◆ 見どころ
- 岡田准一の本格的なアクション(スタントなし)
- コメディ要素とシリアスが絶妙に混ざった作風
- 豪華キャストによる個性的なキャラクター
- 原作の雰囲気を保ちながら映画ならではのテンポ感
◆ 参考になる格闘技・武道・カンフー・護身術
主演の岡田准一さんは、カリ・シラット、ジークンドー、修斗のインストラクター資格を持ち、さらにブラジリアン柔術では黒帯を取得しています。
ストーリーの設定上、基本的には実弾の銃は使わないキャラクターなので、徒手でのアクションシーンが多く、参考になります。
殺し屋というテーマですが、コミカルな描写も多く、シリアスな映画が苦手な人でも見やすいです。
3.映画『ジョン・ウィック』シリーズ
監督: チャド・スタエルスキ
主演: キアヌ・リーブス(ジョン・ウィック)
◆ ストーリー
伝説の殺し屋として裏社会で名を馳せていた男 ジョン・ウィック は、愛する妻の死をきっかけに裏稼業から引退し静かに暮らしていた。
そんなある日、ギャングの襲撃によって
- 妻が遺した大切な 子犬 を殺され
- 愛車の マスタング を奪われる
という暴挙に遭う。
その瞬間、ジョンに眠っていた“最強の殺し屋”としての本性が再び覚醒。
裏社会が震え上がるほどの圧倒的な技量で、復讐の鬼と化していく。
◆ 見どころ
- ガンアクションと格闘技を融合した革新的スタイル「ガン・フー」
- キアヌ・リーブスによる本格スタント
- 殺し屋のホテル「コンチネンタル」など独特の裏社会ルール
- ミニマルで無駄のない復讐劇のテンポ
◆ 参考になる格闘技・武道・カンフー・護身術
主演のキアヌ・リーブスさんは、映画でのアクションシーンのために柔術、柔道、カンフー、システマなどの様々な格闘技を習得・訓練されています。
最強の殺し屋ということで、ほぼ負けない設定ですが、逆に言えば、相手に絶対に勝てる方法で対処する闘い方は無駄が無くて好きです。
打撃や投げ技、絞め技だけでなく、ベルトや本などその場にあるものを武器にして応戦するのは意外と私たちの日常とリンクするものがあるかも知れません。
◆ シリーズ展開
- ジョン・ウィック(2014)
- ジョン・ウィック:チャプター2(2017)
- ジョン・ウィック:パラベラム(2019)
- ジョン・ウィック:コンセクエンス(2023)
4.映画『イップ・マン』シリーズ
監督: ウィルソン・イップ
主演: ドニー・イェン(葉問 / イップマン)
◆ ストーリー
1930年代の中国・仏山。
葉問(イップマン)は武術館を持たず、名声を求めず、静かに詠春拳を磨く控えめな武術家として暮らしていた。
しかし、日中戦争が勃発し日本軍が仏山を占領すると、街は混乱し、彼自身や家族も困窮する。
そんな中、葉問は日本軍の剣術家や武術家との戦いに巻き込まれ、最終的には民衆を守るため立ち上がることになる。
◆ 見どころ
- ドニー・イェンの圧巻の詠春拳アクション
- 1対10など、名シーンと呼ばれる圧倒的バトル
- 史実を元にしつつ、映画的に濃縮されたドラマ性
- 葉問の「誠実で謙虚な人格」と「武術家としての強さ」のギャップ
◆ 参考になる格闘技・武道・カンフー・護身術
カンフー映画で有名なドニーイェンさんが主演。
ドニーイェンさんは4歳から母親(太極拳の師範)に武術を習い始め、北京市の体育学校で、ジェット・リーも学んだ本格的な武術訓練を受けています。
本作品の主演を務めるにあたり、ブルース・リーの師匠である伝説の武道家イップ・マンが完成させた詠春拳を徹底的に学んだそうです。
詠春拳は女性でも使えるカンフーとして有名で、ボクシングや空手などに対してもブレずに詠春拳で対応する動きが勉強になります。
まさに力に対して技で制するというアクションシーンが印象的で、護身術に近い要素を持っています。
◆ シリーズ展開
- イップ・マン(2008)
- イップ・マン 葉問(2010)
- イップ・マン 継承(2015)
- イップ・マン 完結(2019)
5.映画『マスターZ』
監督:ユエン・ウーピン
主演:マックス・チャン(張天志 / チョン・ティンチ)
◆ ストーリー
詠春拳の使い手 チョン・ティンチ は、イップ・マンとの敗北を経て武術界から身を引き、息子と平穏に暮らすことを選んでいた。
しかし、街を仕切るギャング、腐敗した警察、麻薬取引などの犯罪が蔓延する中、彼はトラブルに巻き込まれ、
大切な人々を守るため再び拳を振るうことを決意する。
◆ 見どころ
- 詠春拳をベースにしたスピード感と切れ味のある格闘
- イップ・マンの「ライバル」が主人公となり、成長と救済の物語
- 息子を守るパパと息子の親子の絆
◆ 参考になる格闘技・武道・カンフー・護身術
先述の映画『イップ・マン』の外伝ですが、今回の主役はドニーイェンさんよりも更に細身のマックスチャンさんです。
おそらく手足の長さはドニーイェンさんより少し長いようで、リーチを活かした闘い方が印象的です。
筋肉モリモリの相手に対して、技術で闘うシーンはカンフーの可能性を感じさせてくれます。
個人的には『イップ・マン』よりも好きな作品です。
6.ドラマ『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』
脚本:金城一紀(『SP』『BORDER』など)
主演:小栗旬、西島秀俊
◆ ストーリー
元自衛隊員で心に深い傷を負う**稲見朗(小栗旬)と、元公安の情報捜査官で冷静沈着な田丸三郎(西島秀俊)**は、公安部に新設された「特捜班」に配属される。
この特捜班は、テロ、大規模犯罪、国家機密に関わる事件など、通常の警察では扱えない“国家レベルの危機(クライシス)”に対処するために作られた特殊チーム。
- 政治家の不正
- テロ組織の暗躍
- 宗教団体の暴走
- 反政府組織の活動
- 国家が隠蔽する闇
など、複雑で危険な事件に挑む中で、国家のために正義をねじ曲げるか、個人としての正義を守るかという葛藤が描かれていく。
◆ 見どころ
- 小栗旬 × 西島秀俊の緊張感あるバディ演技
- 本格的なアクション(格闘・銃撃・市街地戦)
- 「国家の闇」に踏み込むハードな社会派ストーリー
- 1話完結型のテンポの良さ + 全体を通した大きな謎
- 脚本・金城一紀らしいスピード感と政治スリラー要素
◆ 参考になる格闘技・武道・カンフー・護身術
主演の小栗旬さんと西島秀俊さんによるアクションシーン。
小栗旬さんは高身長なので、長い手足を活かした闘い方をしており、逆に西島さんは俊敏性を活かした闘い方をしているのが印象的です。
警棒を使って複数の相手と対峙するシーンや、警察ならではの相手を取り押さえる逮捕術も大変参考になります。
7.映画『ヘルドッグス』
監督/脚本:原田眞人
主演:岡田准一(兼高昭吾)、坂口健太郎(室岡秀喜)
原作:深町秋生『ヘルドッグス 地獄の犬たち』
◆ ストーリー
元警察官の 兼高昭吾(岡田准一) は、とある人を殺された過去を持っており、そのトラウマから “復讐の鬼” と化している。
彼は警察から ヤクザ組織(関東最大の組織「東鞘会」) への潜入を命じられる。
潜入するとすぐ、兼高は 室岡秀喜(坂口健太郎) と出会う。室岡は非常に危険で “制御不能なサイコボーイ” 的な存在。
二人はバディ(コンビ)となり、裏社会の抗争、裏切り、暴力の渦の中で任務を遂行していく。
物語は、復讐、信頼、人間の本性というテーマが交錯する緊迫したクライム・サスペンスになっている。
◆ 見どころ
- キャラクターの濃さ:兼高(復讐に縛られる男)、室岡(狂気と純真の両面を持つ青年)という強烈なキャラの掛け合い
- ノンストップ展開:予測不可能な展開と暴力、アクションが続く
- 裏社会の描写:ヤクザ組織や警察の暗部、潜入捜査など、リアルでダークな世界観
- 演技力:岡田准一&坂口健太郎という主演二人の熱演
◆ 参考になる格闘技・武道・カンフー・護身術
ファブルと同じく主演の岡田准一さんによる、よりシリアスな役のアクションです。
こちらの作品では、岡田准一さん以外の役者さんのアクションも見応えがあり、特に私はナイフ術に長けたヤクザ役の三元雅芸さんの技が好きです。
ナイフや銃などの対武器への対処法や、狭い店内での闘い方、不利になった状況での寝技での闘い方なども参考になりました。
シリアスかつ暴力描写が多いので、バイオレンス系が苦手な方はご注意ください。
8.ドラマ『ガンニバル』
原題:Gannibal(ガンニバル)
原作:二宮正明(漫画)
主演: 柳楽優弥
◆ ストーリー
主人公は 阿川大悟(警察官、演:柳楽優弥)。彼は妻・子供とともに、山間の美しい村「供花村(くげむら)」へ駐在として赴任。
この村には「この村では、人が喰われるらしい」という恐ろしい噂がある。
大悟は警察官としてその真相を追い始めるが、村人たちはどこか不気味で、見た目の平和とは裏腹に深い秘密を抱えている。
次第に、大悟は自分が信じていた現実と狂気の境界があいまいになっていき、自分自身も疑心に囚われていく。
シーズン2では、供花村を支配する 後藤家 の過去、村に隠された呪い、そして暴力と狂気に満ちた対立がさらに明らかになる。
◆ 見どころ
- 濃厚なサスペンスとホラー:村の風景が美しい一方で、恐怖の本性が徐々に明らかになる怖さ。
- 心理描写の深さ:主人公だけでなく村人や後藤一族の心理が丁寧に描かれ、狂気と正常の境界が揺らぐ。
- ビジュアルと演出:静かな山村の風景、緊張感あるカメラワーク。
- 家族・因習・権力:村の支配構造や「血の一族」の影がストーリーを重層的にしている。
- 過激さ:シーズン2では暴力表現やホラー表現がより強くなっているという情報も。
◆ 参考になる格闘技・武道・カンフー・護身術
主演の柳楽優弥さんは、様々な映画、ドラマに出ており、悪役でも活躍していますが、正直アクションが上手なイメージはありませんでした。
しかし、ガンニバルでは、優秀だが暴力的な警官の役で登場し、特にシリーズ2で覚醒した後の格闘シーンは圧巻で、銃だけでなく、打撃や寝技まで披露し、かつ無駄の無い動きが印象に残っています。
「人喰い」というテーマなので、グロテスクなシーンが苦手な人は注意が必要ですが、どんどん次の話を見たくなる作品です。
9.映画『殺し屋国岡』シリーズ
監督:阪元裕吾
主演:伊能昌幸(国岡昌幸役)
◆ ストーリー
阪元監督は「ベイビーわるきゅーれ」の脚本執筆中に、関西に「殺し屋ビジネス」のネットワークがあることを知る。
その実態を探るため、京都最強と呼ばれるフリーの殺し屋、国岡昌幸に密着取材を行う。
映像は、彼の仕事としての暗殺(契約殺人)の様子だけでなく、普段の生活(モーニングルーティン、友人関係、私生活)にもフォーカス。
ある依頼で「連絡ミス」が起きてしまい、ターゲットを間違えてしまった国岡。そのことで依頼元のみならず、復讐を狙う相手からも狙われ、大きなトラブルへ発展。
結果、大規模な銃撃戦や殺し合いへと発展し、日常の淡々としたシーンとアクションが交錯する。
◆ 見どころ
- フェイク・ドキュメンタリー形式(モキュメンタリー):リアルな取材映像風だが、演出が入っており、ドキュメンタリーとフィクションの中間のスタイル
- ギャップのある描写:殺し屋という非日常的な職業を持ちながらも、国岡の”普通の人間らしい日常”が描かれる
- アクション:先述のベイビーわるきゅーれと同じ阪元監督ならではのアクションシーン
◆ 参考になる格闘技・武道・カンフー・護身術
ストーリー自体はフィクション要素は多いですが、ドキュメンタリーのような作りになっている事から、CGなどは使われておらず、主役の伊能昌幸さんのアクションシーンをリアルで見ることができます。特にパンチが得意なスタイルなようで、コンビネーションなどを学べます。
長期にわたる徒手での格闘シーンでは、闘っている者同士が疲れてきているような描写もあり、通常のアクション映画とは一味違った綺麗すぎないアクションシーンを見る事ができます。
10.映画『カンフーハッスル』
監督/主演:チャウ・シンチー
舞台:1930年代の中国
◆ ストーリー
ギャング集団「斧頭会(フートウホエイ)」が支配する街。
チンピラ気取りの青年 シン(チャウ・シンチー) は、斧頭会に憧れているが、実際は弱く冴えない男。
ある日、斧頭会が貧民街の “ピッグスティー長屋(豚小屋城寨)” にちょっかいを出すと、
そこに住むごく普通の住人と思われていた人々の中から、伝説級のカンフーの達人たち が次々と正体を現す。
街は大混乱に陥り、さらに“巨大な敵”が送り込まれる中、シン自身の中にも“眠っていた才能”が覚醒していく――。
◆ 見どころ
- 十二橋の達人、鉄の拳の夫婦、獄中最強の男「獄長拳」など、濃いキャラが次々登場
- ワイヤーアクション+CG+実写の絶妙な融合
- 香港映画らしいギャグ、テンポとチャウ・シンチーらしいスラップスティックコメディ。
- シンの“どん底からの覚醒”
◆ 参考になる格闘技・武道・カンフー・護身術
日本で大ヒットしたカンフーハッスルでも主演を務めたチャウシンチーさんによるカンフー。
ギャングVS貧困街という一見シリアスな内容かと思いきや、やはりそこはチャウシンチー監督で、ギャグ要素もしっかり含まれています。
ワイヤーアクションも使っているので、「ありえねー!」と感じるシーンは多いものの、太極拳、棒術、蹴り技などは大変勉強になります。
個人的には主人公であるチャウシンチーが相手の「足を踏む」という技を使うシーンが好きです。
以上、護身術講師が選ぶおすすめの映画・ドラマ10選でした!
自分も何か護身術に興味を持たれた方は、ぜひ道着のいらない護身術の練習に参加してみてください。
私もかつてはジャッキー・チェンさんに憧れて武道を習い始めた身なので、映画のお話もできればと思います。